トボルコーヒーでの日々を振り返って。私がこのブログを書き始めた理由

cakes

何度も試作を重ねて、やっと「これだ!」と思える味が完成した時の嬉しさは、本当にひとしおです。

そして何より、お客様が一口食べて「美味しい」と笑顔を見せてくださった時。「ああ、頑張ってよかった」と、すべての苦労が報われたような、心からの安堵と喜びに包まれます。

思えば、その笑顔を追い求めることこそが、私が今日までお菓子作りを続けてこられた一番の原動力だと言えます。

今回の写真の「タルトタタン」も、そんなふうにして季節の美味しさをギュッとケーキに閉じ込めたいと願い、試行錯誤の末に完成したレシピです。

私にはちょっとしたこだわりがあって、タルトタタンを作るなら絶対に「紅玉(こうぎょく)」りんごのみを使いたいんです。そのまま食べるには少し酸味が強い品種ですが、お菓子にするとその酸味こそが、たまらなく魅力的な深い味わいへと変わってくれます。

けれど、紅玉は旬があっという間に過ぎてしまううえに、タルトタタンの仕込みはとにかく時間と手間がかかります。

カフェを営んでいた頃、これをメニューとして出し続けるのは本当に至難の業でした。自分の「作りたい」「届けたい」という情熱だけでは、お店の運営は成り立たないんですよね。だからこそ、店頭には並べられず「幻のケーキ」に終わってしまうこともしばしばありました。

いつか、この紅玉のタルトタタンの格別な美味しさを、秋のレッスンで皆さんにお伝えできたらいいな、と密かに夢見ています。

さて、私がこのブログを始めようと思ったのには、理由があります。

人生の折り返し地点をとっくに過ぎた今、お菓子作りを中心としたこれまでのさまざまな経験を、一度ゆっくり振り返ってみたくなったんです。

お店のこと、毎日の暮らしのこと。数え切れないほどいっぱい失敗もしてきたし、自分なりに必死に努力もしてきました。

これからの私は、その泥臭い経験や手に入れた小さなコツを、今それを必要としている誰かに届けていきたい。

「こんなこと知りたいな」「誰かの経験談を聞いてみたいな」と、かつてもがいていたあの頃の自分に向かって、手紙を書くように。

そんな風に思いを馳せながら、等身大の言葉を綴っていきたいなと思っています。