秋が深まってくると、無性に作りたくなる特別なお菓子があります。
それは、私がかつて修行していたお店の看板メニューだった「りんごパイ」。
毎年秋になると、このパイを心待ちにしてくださるお客様がたくさんいらして、シーズン中は本当に数え切れないほどの数を焼きました。
瑞々しいりんごを、絶妙な「ちょうどいい厚さ」にひたすらスライスして、重ねて、また重ねて……。まだ作業に慣れない頃は、よく指を切ってしまうこともあったな。
バターがふわりと香る、サクサクでほろほろとした食感の「ブリゼ生地」。
そこに薄くスライスしたりんごを、まるでミルフィーユのようにぐるぐると螺旋状に重ねて並べ、じっくりと焼き上げていきます。
オーブンの中で、溢れ出るりんごの果汁とお砂糖がとろけ合い、やがてキャラメルのような美しい結晶へと変わっていく。パイの縁は、ひらひらとした美しいレースのように波立ち、まるでポカポカとした「お日様」のような形に焼き上がるんです。
どんな表情で焼き上がるか、もう何度も見て知っているはずなのに、オーブンから取り出す瞬間は毎回たまらなくワクワクしてしまいます。
本当にシンプルな材料なのに、ハッとするほど感動する美味しさ。
よくある「アップルパイ」とも違うし、「りんごタルト」とも全く違う。りんごの持つ美味しさを、これ以上ないほど最大限に引き出した感動の味です。
あの頃、無我夢中で作ったこのお日様みたいなりんごパイ。
これからもずっと大切に、この心を動かす美味しさをずっと先まで作っていきたいなと思っています。

