渋皮煮と指のタコ。秋の仕込みと思い出

cakes

秋の気配を感じると、必ず思い出すのは「栗」のこと。

でも、極上の和栗モンブランになるまでの仕込みが、もう本当に大変過ぎるんです。おいしいものを追求すると仕方ないことではあるのだけれど……渋皮煮を作る工程は、想像を絶する作業量。

ひたすら硬い鬼皮を剥き続けるから、指にはタコができるし、手首も痛んでくる。時々手が滑って指を切ってしまうこともあるし、剥き殻のゴミは散らかるし……。さらに、アクを抜くために何度も何度も茹でこぼしをして。もう、言葉にするだけでため息が出そうなほど大変です(笑)。

でも、この途方もない手間暇の先にしか、あの格別の「おいしさ」は待っていないんですよね。

以前、カフェを始めてすぐの秋のこと。

なんと、あの和栗のモンブランがいつの間にか覆面調査を受けていて、ある出版社のグルメコミュニティサービスで「三ツ星」を獲得したことがありました。

ある日突然送られてきた立派な盾を見て、「えっ、いつの間に!?」とびっくり。

でも、指が痛かったことも、仕込みがツライなぁと嘆いた時間も、どこかで誰かがちゃんと見て、味わってくれていた。その事実がシンプルに、ものすごく嬉しかったんです。

「わー、大変。これは何事も誤魔化さず、真摯に仕事に向き合わなくちゃ」と、すっと襟を正す気持ちになったのを、今でも鮮明に覚えています。

お店をしていると、こういうありがたいご縁が何度かありました。雑誌に取り上げていただいたり、ネットの記事にしていただいたり。

広大なネットの大海には、今もあの頃の記事がふかふかと漂っています。

たまに検索して見返しては、「あの頃も一生懸命だったな」と懐かしむ、私のちょっとした宝物のようなネタになっています。